SS Logs 1
ぼくのルヴナン / SSログ
エレーヌはクラブ・プライベート・ブラッドの住人である。 一部の例外を除いて、吸血鬼たちの集うプライベート・ブラッドにおいて、その住人であるということは、吸血鬼であるということを意味する。 エレーヌもその例に違わず、吸血鬼である。 それも、エレーヌはその中でも一部に割り振られる、「夜」の仕事を請け負っている吸血鬼であった。
休日の夜、ぼくとシリルは、プライベート・ブラッドの前にいた。 吸血鬼と契約した後もクラブで他の吸血鬼と戯れる人間もいるらしいが、一人きりだった時ですらろくに吸血鬼と話すことが出来なかったぼくに、そんな器用なことが出来るはずもない。 ただ、ロジェ――このクラブを取り仕切っているらしい少年が、言ったのだ。
「お嬢様」 私の一日は、優しい声で始まる。 「ドロテアお嬢様、お目覚めのお時間ですよ」
端的に言って、疲れていた。 色々とあって、他教室の先生――環境学のスリマン先生に絞られたのだ。 きっかけは覚えていないが、確かうちの教室の生徒がどうの、とかそういった重箱の隅をつつくようなところから始まって、そも青二才が指導するのが間違いでは、オーバン教授に任せておけばよいものを、などと言われた気がする。 青二才。言うに事
「あ」 かすれてきたペンを持ち上げ、インクを取り替えようとした時である。思わず声を上げて、ぼく、ケイ・リー・ドゥブレは持っていたインクの瓶の底を睨んだ。