ぼくのルヴナン短編

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SS Logs 1

ぼくのルヴナン / SSログ
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甘い指先

ぼくのルヴナン / 菓子と二人
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ナイフとフォークよりもはやく (R-18)

「帰ったよ」  廊下からリビングに出ても、普段の通りくつろぐ吸血鬼の姿はなかった。 今日は土曜日。もう日が沈んでしばらくが経つから、教義の上では安息日だ。であるからこそ今日はなにもせず、どこにも出かけず、ゆっくりすごそうと思っていたのだが、...
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いつか朽ちてしまうまで

(「ぼくのルヴナン」同人誌版より10年ほど後)  ◆   戸を開けると、一人の男が言葉もなく突っ立っていた。 ふわふわのプラチナブロンドと、眠たげな青の瞳が特徴的な男である。見た感じ、成人してしばらくが――十年以上が経っているようであったが...
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仮初めの生を受くる者

 エレーヌはクラブ・プライベート・ブラッドの住人である。 一部の例外を除いて、吸血鬼たちの集うプライベート・ブラッドにおいて、その住人であるということは、吸血鬼であるということを意味する。 エレーヌもその例に違わず、吸血鬼である。 それも、エレーヌはその中でも一部に割り振られる、「夜」の仕事を請け負っている吸血鬼であった。

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黒のオニキス

 休日の夜、ぼくとシリルは、プライベート・ブラッドの前にいた。 吸血鬼と契約した後もクラブで他の吸血鬼と戯れる人間もいるらしいが、一人きりだった時ですらろくに吸血鬼と話すことが出来なかったぼくに、そんな器用なことが出来るはずもない。 ただ、ロジェ――このクラブを取り仕切っているらしい少年が、言ったのだ。

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オットー家の娘

「お嬢様」  私の一日は、優しい声で始まる。 「ドロテアお嬢様、お目覚めのお時間ですよ」

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クロウタドリさん、ハグはいかが

 端的に言って、疲れていた。 色々とあって、他教室の先生――環境学のスリマン先生に絞られたのだ。 きっかけは覚えていないが、確かうちの教室の生徒がどうの、とかそういった重箱の隅をつつくようなところから始まって、そも青二才が指導するのが間違いでは、オーバン教授に任せておけばよいものを、などと言われた気がする。 青二才。言うに事

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サファイアよ、字と躍れ

「あ」  かすれてきたペンを持ち上げ、インクを取り替えようとした時である。思わず声を上げて、ぼく、ケイ・リー・ドゥブレは持っていたインクの瓶の底を睨んだ。