彼方遠くの星よりも Intro +サンプル (R-18)
小さな頃、天に広がる星を掴むのが好きだった。 もちろん実際に掴める訳ではない。手を伸ばして、遙か遠くの空めがけて拳を握るだけだ。 それでも、無数に瞬く星の一つを手に入れたような気がして、わくわくした。 子供の頃の好きだったことは悪癖として残...
※猟奇的な表現を含みます
エレーヌはクラブ・プライベート・ブラッドの住人である。 一部の例外を除いて、吸血鬼たちの集うプライベート・ブラッドにおいて、その住人であるということは、吸血鬼であるということを意味する。 エレーヌもその例に違わず、吸血鬼である。 それも、エレーヌはその中でも一部に割り振られる、「夜」の仕事を請け負っている吸血鬼であった。
休日の夜、ぼくとシリルは、プライベート・ブラッドの前にいた。 吸血鬼と契約した後もクラブで他の吸血鬼と戯れる人間もいるらしいが、一人きりだった時ですらろくに吸血鬼と話すことが出来なかったぼくに、そんな器用なことが出来るはずもない。 ただ、ロジェ――このクラブを取り仕切っているらしい少年が、言ったのだ。
「お嬢様」 私の一日は、優しい声で始まる。 「ドロテアお嬢様、お目覚めのお時間ですよ」