彼方遠くの星よりも

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レイニーステップ

シグ×クウヤ / 通り雨の話
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カウントダウン

クウヤがバスルームを出ると、キッチンでシグが何事かしているのが見えた。 髪の毛先から滴る水分をタオルに吸い取らせながら、彼へと近づく。手元を覗き込むと、先日乞われて買ってやった大きめのボウルに入った薄い黄色のなにかを、へらでゆっくりとかき混...
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また夜に

「おはよう、シグ」  起きる時間が経ってから数分、のそのそとリビングへ姿を現したシグのマスター・クウヤは、いかにも眠そうな様子でキッチンの向かいに据えられたカウンターテーブルへの席についた。 身支度こそ終わっているが、それだけは済ませたと言...
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グッドナイト、マイボーイ

ベッドに潜り込み、AIにおやすみと声をかけて照明を落とそうとした、その時であった。 「……マスター」  部屋の外から、クウヤを呼ぶ声がした。シグの声だ。 声はごく控えめなもので、シグの性格からして、恐らく反応が遅れたらすぐさま引き返してしま...
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微笑むわけは

「職場に置きっぱなしにしてるモバイルがあるんだが」  仕事帰り、オート・タクシーに乗るなり、マスターであるクウヤ・アマサキはおもむろに口を開いた。 「……はい」  話の先が見えないことには、なにも問いかけられない。相槌を打つと、着ている立て...
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吐息はシュガーミルク (R-18)

照明を絞った自室の中で、白い体がほんのりとオレンジ色の影を落として身を捩らせている。 狭い肩が竦められたかと思うと、細い腕が後ろから自身を抱くシグの腕を掴んだ。 だが、その力はごく弱い。抵抗していると言うよりも、縋りついているようであった。...
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彼方遠くの星よりも Intro +サンプル (R-18)

小さな頃、天に広がる星を掴むのが好きだった。 もちろん実際に掴める訳ではない。手を伸ばして、遙か遠くの空めがけて拳を握るだけだ。 それでも、無数に瞬く星の一つを手に入れたような気がして、わくわくした。 子供の頃の好きだったことは悪癖として残...
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彼方遠くの星よりも 設定紹介

※大してSF知識のない人間が勢いで書いているシリーズなので、考証などは気にせずお読み頂けますと幸いです Introduction 西暦2300年代に地球外惑星へ居住を移し、暦をマルグリット暦へと改めてから250年余りが経過した星々の世界――...