SS Logs 1

明け方あなたが凍えぬように

 膝を突いた場所からぎし、と軋んだ音がする。
 ベッドの上、息つく暇もないほど口づけを繰り返しながら、ケイの手が首の後ろで動く。
 結んでいたタイがほどけて、ケイの手首にまとわりついた。

「……ん」

 跨がった体の下で、ケイが眉をしかめて身じろぎした。タイが邪魔なんだろう。
 手首を取って、タイをつまみ上げる。その時に、太い脈がとくん、と指の腹の下でかすかに動いた。
 ああ。齧りたい。齧って、思うがまま啜ってしまいたい。
 けれどもそうしたらケイは干からびてしまうだろう。それは、困る。
 この味の血が吸えないことなんて、もう考えられなかった。
 もしケイがいなくなっても、運が良ければ相性のいい人間が現れるだろう。
 でも、違う。そうじゃない。俺はもう、ケイの血しか、吸いたくない。
 手首に牙を立てたくなる本能を抑えながら、そっとそこに唇を押し付ける。味見代わりに舌で少し舐めてしまった俺を見て、ケイがふ、と笑った。

「おいで」

 あぁ、今のが彼のお気に召したのかな。よく分からない。けれども、触られるのは、気持ちがいい。
 腕を引かれる。体が重なって、けれども溶けてどろどろになんてならなくて。
 そのまま。俺もケイも、そのまま。ただ、二人だけのなにかを共有する。
 そうして朝を迎えるのは、嫌いじゃない。